薬局風景

コラムColumn

2026年7月14日、PMDA(医薬品医療機器総合機構)より、オメプラゾール・ランソプラゾール・ラベプラゾール・エソメプラゾール・ボノプラザンなど、プロトンポンプインヒビター(PPI)含有製剤について、「低マグネシウム血症」に関する使用上の注意の改訂が指示されました。

PPIはGERD(逆流性食道炎)や、NSAIDs・低用量アスピリン投与時の潰瘍予防などで長期処方されることが多い薬剤群であり、在宅療養中の高齢患者にも該当するケースが多いです。今回はこの改訂の要点と、調剤薬局・地域の医療介護スタッフとして押さえておきたいポイントをまとめました。

今回の記事の内容を1枚にまとめました。忙しい人、手早く全体像を把握したい人はこちらをチェック。

以下のボタンから高画質pdf版をダウンロードできます。A4に印刷して配布可能です。

AI解説動画:この号の内容をスライド形式で視覚的に解説する動画版です。動画でチェックしたい人はこちらをどうぞ。

項目現行改訂案
8. 重要な基本的注意(新設)本剤の長期投与により低マグネシウム血症があらわれることがあるので、本剤を長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測定すること。
11.1 重大な副作用(新設)低マグネシウム血症
本剤の長期投与により、QT延長、痙攣、しびれ等を伴う低マグネシウム血症があらわれることがある。また、低マグネシウム血症に起因した低カルシウム血症、低カリウム血症等の電解質異常を伴う場合がある。これらの電解質異常が疑われる症状があらわれた場合には、血中マグネシウム濃度の測定を行い、異常が認められた場合は、マグネシウムの補充等の適切な処置を行うこと。

対象医薬品(一般名・代表的な販売名)

  • オメプラゾール(オメプラール、オメプラゾン 等)
  • ラベプラゾール(パリエット 等)
  • ランソプラゾール 経口・注射剤(タケプロン 等)
  • エソメプラゾール(ネキシウム 等)
  • ボノプラザン(タケキャブ 等)
  • 上記を含む配合剤(タケルダ配合錠、キャブピリン配合錠、ボノサップパック、ボノピオンパック等)

改訂に至った経緯

PMDAの副作用等報告データベースに登録された症例(MedDRA PT「低マグネシウム血症、血中マグネシウム減少、マグネシウム欠乏」、CTCAE Grade3以上かつPPI中止後に複数回血中マグネシウム値を測定している症例)を評価。症例の因果関係評価および使用上の注意の改訂要否について専門委員の意見も聴取した結果、PPI含有製剤と低マグネシウム血症との因果関係が否定できない症例が集積したことから、改訂が適切と判断されました。

  • ・長期にPPIを服用している患者には、「最近足がつりやすい」「手足がしびれる/ピリピリする」「動悸がある」といった症状の有無を投薬の際などに確認する。
  • ・該当する症状があれば、血中マグネシウム値の測定を処方医に提案し、情報提供書等で連携する。
  • ・特にNSAIDs・低用量アスピリンとの長期併用者、利尿薬併用者(相加的にMgが低下しやすい)、H.ピロリ除菌後も漫然と継続処方されている患者は要注意。
  • ・「長期投与」の具体的な期間の定めはないが、他剤の添付文書例では概ね1年以上の継続投与が目安とされることが多い。

在宅の現場で気づけること ――ケアマネジャー・訪問看護のみなさまへ

在宅療養中の患者さんの中には、PPIを長期間服用し続けているケースが少なくありません。次のような変化に気づいたら、些細なことでも構いませんので、かかりつけ薬局または主治医にご連絡ください。

  • ・最近、足がつりやすくなった(こむら返り)
  • ・手足のしびれ・ピリピリ感がある
  • ・原因のわからないふらつき・脱力感
  • ・動悸や、いつもと違う脈の乱れ

これらは「年のせい」「体調のせい」と見過ごされがちですが、背景に薬剤性の低マグネシウム血症が隠れている可能性があります。日常的に患者さんと接する現場の気づきが早期発見の一番のカギです。気になる変化があれば、処方医や薬局までご連絡ください。

気づきチェックフローチャート:症状の有無をYES/NOで辿っていくと、「経過観察でよいか」「早めに相談すべきか」がわかります。

DI NEWS

気づきチェックフローチャート

PPI(プロトンポンプインヒビター)を長期に服用している患者さん・ご利用者さんについて、当てはまる症状を選んでください。
※これは受診の代わりになるものではなく、「気づき」を促すための簡易チェックです。

その方は、PPI(オメプラゾール・ランソプラゾール・ラベプラゾール・エソメプラゾール・ボノプラザン等の胃薬)を長期間服用していますか?
STEP 2 / 2
最近、次のような様子はありませんか?(当てはまるものを選んでください)

いまのところ経過観察でよさそうです

薬局・主治医へのご相談をおすすめします

  • ・独立行政法人医薬品医療機器総合機構「プロトンポンプインヒビター含有製剤(医療用)の『使用上の注意』の改訂について」(2026年7月14日)https://www.pmda.go.jp/files/000281529.pdf
  • ・厚生労働省医薬局医薬安全対策課長通知 医薬安発0714第1号「『使用上の注意』の改訂について」別紙1・別紙2・別紙4(令和8年7月14日)https://www.pmda.go.jp/files/000281703.pdf