メトロ・メディカル・インフォメーション、ちぢめてMMI。医療従事者向けDI(医薬品情報)ニュースとして、いま知っておきたい薬にまつわる最新情報をお届けします。
オンスイク(インスリン エフシトラ アルファ)とアウィクリ(インスリン イコデク)は、どちらも週1回の基礎インスリンですが、初回量・打ち忘れ・保管のルールが異なります。
2026年9月16日、週1回投与の持効型溶解インスリン「オンスイク注ミリオペン総量1500単位」(インスリン エフシトラ アルファ、日本イーライリリー)が、インスリン療法が適応となる2型糖尿病を効能・効果として承認されました。執筆時点(2026年10月27日)では販売開始前です(電子添文の販売開始欄は未記載)。
週1回インスリンは、2025年1月に発売された「アウィクリ注 フレックスタッチ」(インスリン イコデク、ノボ ノルディスク ファーマ)に続いて2剤目です。どちらも「週1回の基礎インスリン」ですが、初回の用量、打ち忘れたときの対応、1目盛の単位数、使用開始後の保管方法 がそれぞれ異なります。2剤が並んで使われる時代に備えて、MMI10月号では取り違えやすい違いを電子添文に基づいて整理しました。
オンスイクとアウィクリの違い 週1回インスリンの切り替え・打ち忘れ・保管を比較
まず押さえたい違い(早見表)
違い 初回だけの目安量
2型で連日投与のBasalから切り替えるとき、初回のみ基準量の1.5倍を推奨(必要性は慎重に判断)
連日投与のBasalから切り替えるとき、空腹時血糖値120mg/dL超なら初回のみ基準量の3倍。Basal未使用なら初回300単位(条件により150単位)
違い 打ち忘れたとき
気づいた時点で投与。次回は4日間以上あけて開始し、新たな開始日の曜日で継続
4日以内なら直ちに投与。4日を超えていたら投与しない。いずれの場合も、もとの曜日に戻す
違い 使用開始後の保管
室温・遮光で6週(総量300単位)/12週(総量700単位)以内。冷蔵も可
冷蔵・遮光で112日(16週)以内。室温は未使用期間も含め累積14日まで
基準量=それまでの連日投与のBasalインスリンの1日総投与量×7(オンスイクは製剤により×0.8×7)。いずれも目安であり、具体的な用量は処方医が患者ごとに決定します。詳しい条件は以下の各項目と各剤の電子添文7項をご確認ください。
1.オンスイクとアウィクリの基本情報
一般名
インスリン イコデク(遺伝子組換え)
インスリン エフシトラ アルファ(遺伝子組換え)
製造販売元
ノボ ノルディスク ファーマ
日本イーライリリー
承認・販売
2024年6月承認2025年1月(総量300単位)・12月(総量700単位)販売開始
2026年9月承認販売開始前(2026年10月27日時点。電子添文の販売開始欄は未記載)
違い 効能・効果
インスリン療法が適応となる糖尿病1型は適用を慎重に考慮(5.1)
インスリン療法が適応となる2型 糖尿病1型には使用しない 。インスリン分泌能が著しく低下した2型でも適用の可否を慎重に判断(5.1)
作用が続く仕組み
アルブミンと可逆的に結合し、ゆっくり解離して作用
IgG2のFc領域と融合。腎クリアランス低下、FcRnを介した再利用など
違い 消失半減期
約155時間日本人2型、8週目
約17日反復投与時
血中濃度が定常状態に達するまで(推定)
2型:初回増量なしで3〜4週初回1.5倍で2〜3週と推定
初回3倍用量なしで8〜10週初回3倍用量ありで4〜6週
濃度・規格
700単位/mL総量300単位(0.43mL)・700単位(1.0mL)、各2本入り
500単位/mL総量1500単位(3mL)、1キット入り
投与部位
大腿・上腕・腹部
腹部・大腿部・上腕部・臀部
用法及び用量(共通)
成人で1週間に1回皮下注射。初期は通常1回30〜140単位。他のインスリンを含めた維持量は通常1週間あたり30〜560単位具体的な開始量・切り替え時の量は電子添文7項と下の項目を参照
同左
「違い」の印は、取り違えに直結しやすい項目です。出典:各剤の電子添文
2.切り替え時の初回量の違い(1.5倍と3倍)
基本の考え方は2剤とも「連日投与していたBasalインスリンの1日総投与量の7倍=1週間分(基準量)」ですが、初回だけの上乗せのルール と、オンスイクでは基準量の計算 が違います。この項の開始・切り替え方法は2型糖尿病を対象としています。
なぜ「初回だけ」多く打つのか 週1回インスリンは、毎週注ぐ水がコップにたまるように、少しずつ体内にたまります。点線(満杯)が定常状態です。 アウィクリ(半減期 約1週間) 1回目で満杯の約半分。初回1.5倍で早く満杯近くに 第1週 第2週 第3週 第4週 第5週 第6週 第7週 第8週 第9週 第10週 増量なし 53% 78% 90% 95% 98% 99% 99% 100% 100% 100% 初回だけ1.5倍 79% ×1.5 90% 95% 98% 99% 100% 100% 100% 100% 100% 9割まで 約4週 9割まで 約2週 オンスイク(半減期 約17日) 1回目では満杯の約4分の1。初回3倍で追いつく 第1週 第2週 第3週 第4週 第5週 第6週 第7週 第8週 第9週 第10週 増量なし 25% 43% 58% 68% 76% 82% 86% 90% 92% 94% 初回だけ3倍 74% ×3 81% 86% 89% 92% 94% 95% 97% 97% 98% 9割まで 約9週 9割まで 約5週 もし2回目以降も3倍を続けたら(オンスイク) 第1週 第2週 第3週 第4週 毎回3倍 74% ×3 130% 173% 204% 満杯を超えてあふれ続ける =過量投与、長引く低血糖のおそれ 臨床試験の投薬過誤24例中21例が、初回3倍の 繰り返しなどによる過量投与でした(RMP) 概念図:週1回投与・一次消失のみの単純モデル(吸収・個人差は考慮せず)。満杯=定常状態での最大量。 参考(電子添文の定常状態到達の推定):アウィクリ 増量なし3〜4週、初回1.5倍2〜3週/オンスイク 増量なし8〜10週、初回3倍4〜6週 なぜ「初回だけ」多く打つのか 週1回インスリンは、毎週注ぐ水がコップにたまる ように、少しずつ体内にたまります。 点線(満杯)が定常状態です。 アウィクリ(半減期 約1週間) 1回目で満杯の約半分。初回1.5倍で早く満杯近くに 増量なし(9割まで 約4週) 第1週 第2週 第3週 第5週 第10週 53% 78% 90% 98% 100% 初回だけ1.5倍(9割まで 約2週) 第1週 第2週 第3週 第5週 第10週 79% ×1.5 90% 95% 99% 100% オンスイク(半減期 約17日) 1回目では満杯の約4分の1。初回3倍で追いつく 増量なし(9割まで 約9週) 第1週 第2週 第3週 第5週 第10週 25% 43% 58% 76% 94% 初回だけ3倍(9割まで 約5週) 第1週 第2週 第3週 第5週 第10週 74% ×3 81% 86% 92% 98% もし2回目以降も3倍を続けたら 第1週 第2週 第3週 第4週 74% ×3 130% 173% 204% 満杯を超えてあふれ続ける=過量投与、 長引く低血糖のおそれ。臨床試験の投薬過誤 24例中21例が、初回3倍の繰り返しなどによる 過量投与でした(RMP) 概念図:週1回投与・一次消失のみの単純モデル (吸収・個人差は考慮せず)。満杯=定常状態での最大量。 参考(電子添文の定常状態到達の推定): アウィクリ 増量なし3〜4週、初回1.5倍2〜3週 オンスイク 増量なし8〜10週、初回3倍4〜6週 図:単純モデルによる概念図。実際の血中濃度の推移を示すものではありません。具体的な用量は処方医が患者ごとに決定します。
週めくりで見る「初回だけ違う量」
アウィクリ連日投与のBasalインスリンから(2型)
第1週初回だけ
基準量×1.5
推奨。必要性は慎重に判断
オンスイク連日投与のBasalから・空腹時血糖120mg/dL超
オンスイク連日投与のBasalから・空腹時血糖120mg/dL以下
基準量:アウィクリは連日投与のBasalインスリンの1日総投与量×7(7.4.1)。オンスイクも1日総投与量×7だが、インスリン グラルギン300単位/mL製剤または1日2回投与の中間型インスリンからの切り替えでは1日総投与量×0.8×7で、2回目もこの量が基準(7.4.2)。オンスイクの300単位・150単位は初回だけの目安で、全員に一律の用量ではありません。150→50単位の条件は、低血糖のリスクが懸念される、体重60kg以下、または投与開始時のHbA1c 7.5%以下の患者です(7.3.1)。アウィクリをBasal未使用の患者に始める場合は、開始時の投与量は70単位以下を目安とし、低用量からの投与も考慮します(7.3)。
連日投与のBasalインスリンから切り替える場合(2型)
違い 週あたりの基準量
1日総投与量×7(7.4.1)
1日総投与量×7。グラルギン300単位/mL製剤・1日2回の中間型からは1日総投与量×0.8×7 (7.4.2)
違い 初回の上乗せ
2型は初回のみ基準量×1.5 を推奨。血糖コントロールと低血糖リスクから必要性を慎重に判断(7.4.2)
空腹時血糖値120mg/dL超なら初回のみ基準量×3 。120mg/dL以下は上乗せなし(7.4.2)
2回目
基準量(7.4.3)
基準量(80%換算の場合はその量)。3倍用量を2回目以降に繰り返さない
初回後の用量調整
初回を増量した場合も2回目は基準量。3回目以降は血糖コントロール・低血糖の発現状況・作用特性を考慮して調整(7.4.3)
初回投与後に低血糖を認めた場合は、その後の投与継続を慎重に判断し、適宜減量(7.4.3)
開始のタイミング
電子添文7.4に明記なし
連日投与のBasalインスリンの最終投与日の翌日 から(7.4.1)
上乗せしない場合
―
一過性に血糖値が上昇するおそれ。数週間は血糖モニタリングを十分に行い、必要に応じてケトン体も測定(8.6)
単位数の設定
単位数を再計算せず、指示された単位数をそのまま設定(8.3)
単位数を再計算せず、指示された単位数をそのまま設定(8.4)
週1回製剤から連日投与のBasalインスリンに戻す場合
違い 連日投与製剤の開始時期
最終投与後の朝食前自己血糖測定値等の血糖値を参照して検討(8.10)
空腹時血糖値の上昇が認められたことを確認した上で判断(8.11)
違い 開始用量
週1回投与量の7分の1 を目安(8.10)
空腹時血糖値に応じて低用量から 慎重に設定(8.11)オンスイクの電子添文には7分の1の目安は示されていません
共通の注意
切り替え時とその後一定期間は、血糖モニタリングを慎重に
同左
週1回製剤どうしの切り替え
電子添文に記載なし
切り替えに関するデータは得られていない(7.7)
消失半減期が長いため、週1回製剤の作用は最終投与後もしばらく残ります。戻すときの開始時期と開始用量の考え方は、2剤で異なります。
3.打ち忘れたときの対応の違い
違い 気づいたら
気づいた時点で直ちに投与 (7.8)
忘れた日から4日以内なら直ちに投与 。4日を超えていたら忘れた分は投与しない (7.9)
違い その後の曜日
次の投与は4日間以上 あけて開始し、以後は新たな開始日と同じ曜日 に週1回(7.8)
いずれの場合もあらかじめ定めた曜日 に投与(7.9)
計画的に曜日を変えたいとき
投与間隔を4日間以上とする(7.7)
投与間隔を4日間以上とし、変更後の曜日で継続(7.8)
オンスイクの「打ち忘れから4日以内」と、計画的な「曜日変更は投与間隔4日以上」は別の規定です。打ち忘れのときは7.9項に従い、もとの曜日に戻します。
例:日曜日の予定を忘れ、金曜日(5日後)に気づいた場合
アウィクリ(一例)
金曜日に投与。次回は4日間以上あけて開始し、その日の曜日で週1回を続けます(例:翌週の金曜日から毎週金曜日)。次回の日付は医療者と確認します
オンスイク
4日を超えているので金曜日は投与せず、次の日曜日 に投与(曜日は変わらない)
低血糖の症状があるとき、すでに打ったかどうか分からないときは、自己判断で追加の投与をせず、医療者に確認します。
4.使用開始後の保管の違い(室温と冷蔵)
違い 使用開始後
室温 でキャップ等により遮光。総量300単位は6週間以内 、700単位は12週間以内 。冷蔵(2〜8℃)での保管も可能(20.)
冷蔵(2〜8℃)・遮光 で、使用開始後112日(16週間)以内 (14.1、20.2)
室温での保管
使用中は室温が基本(冷蔵も可)
やむを得ない場合は30℃以下・遮光で、未使用の期間も含めて累積14日まで 。再冷蔵は可能だが、累積日数はリセットされない。累積14日を超えたら廃棄(14.1、適正使用資材)
未使用品
2〜8℃、凍結を避ける有効期間36ヵ月
2〜8℃、凍結を避ける有効期間24ヵ月
使用中のペンの基本の置き場所が「室温」と「冷蔵庫」に分かれる点は、在宅でのお薬管理に直結します。ただし、アウィクリを冷蔵庫で保管していても誤りではありません。
5.その他の電子添文上の違い
腎機能障害
重度の腎機能障害で低血糖を起こすおそれ(9.2.1)
中等度以上 で、開始時と一定期間は血糖モニタリングを十分に行い慎重に用量調整(血中濃度が上昇するおそれ)。切り替え時は特に注意(9.2.1)。重篤な腎機能障害では低血糖を起こしやすく、使用経験は限られる(9.2.2)
妊婦・授乳婦
有益性が危険性を上回る場合のみ/授乳の継続・中止を検討
投与しないことが望ましい/授乳しないことが望ましい
特有の併用注意
―
抗FcRn抗体製剤(ニポカリマブ等) :血中濃度が低下する可能性
投与経路
静脈内・筋肉内に投与しない
静脈内に投与しない。持続皮下注入ポンプで投与しない
6.オンスイクとアウィクリの臨床試験・薬物動態の比較
医師・薬剤師向けに、両剤の第III相試験と薬物動態の違いをまとめました。両剤を直接比べた試験はまだないため、読み方の注意とあわせてご覧ください。
▼ 臨床試験と薬物動態の比較第III相試験8本・間接比較2本・薬物動態。タップで開閉します 両剤を直接比べた試験はありません
2026年10月時点で、アウィクリとオンスイクを同じ試験の中で直接比べた無作為化比較試験(head-to-head試験)はありません。以下は、それぞれが別々に行った第III相試験を、対象患者ごとに並べたもの です。対照薬(グラルギンかデグルデクか)、試験期間、用量調整の方法、低血糖の集計期間が試験ごとに違うため、数値どうしを直接比べて優劣を判断することはできません。
対象患者ごとの第III相試験(主要評価項目:HbA1c変化量)
インスリン未使用の2型
ONWARDS 1 :対グラルギン、52週評価(投与期間78週)、984例HbA1c −1.55 vs −1.35、群間差 −0.19[95%CI −0.36〜−0.03]。非劣性・優越性を検証
QWINT-2 :対デグルデク、52週、928例HbA1c −1.34 vs −1.26、群間差 −0.081[−0.22〜0.06]。非劣性を検証
Basalインスリン治療中の2型
ONWARDS 2 :対デグルデク、26週、526例−0.93 vs −0.71、群間差 −0.22[−0.37〜−0.08]。非劣性・優越性を検証
QWINT-3 :対デグルデク、26週評価(投与期間78週)、976例(電子添文の記載)−0.86 vs −0.75、群間差 −0.11[−0.22〜0.01]。非劣性を検証
Basal-Bolus療法中の2型
ONWARDS 4 :対グラルギン、26週、582例−1.16 vs −1.18、群間差 0.02[−0.11〜0.15]。非劣性を検証
QWINT-4 :対グラルギン、26週、730例−1.07 vs −1.07、群間差 0.01[−0.13〜0.14]。非劣性を検証
1型(参考)
ONWARDS 6 :対デグルデク、26週評価(投与期間52週)、582例群間差 0.05[−0.13〜0.23]。非劣性を検証
QWINT-5 :対デグルデク、26週評価(投与期間52週)、692例群間差 0.052[−0.077〜0.181]。非劣性を検証。オンスイクは1型の適応なし
HbA1cの変化量・群間差の単位はパーセントポイント。ONWARDS試験の数値は電子添文・原著論文(非劣性マージン0.3)。QWINT-2〜4の数値と非劣性マージン0.3は国内電子添文17.1項の解析によります(原著論文の主解析では非劣性マージン0.4で、数値も一部異なります)。QWINT-5は原著論文(非劣性マージン0.4)。
低血糖(レベル2またはレベル3、患者あたりの年間発現件数)
インスリン未使用の2型
0.30 vs 0.16ONWARDS 1、52週。発現割合 9.8% vs 10.6%
0.57 vs 0.44QWINT-2、52週。発現割合 27.90% vs 22.08%
Basalインスリン治療中の2型
0.73 vs 0.27ONWARDS 2、26週。推定率比1.93[95%CI 0.93〜4.02]。発現割合 14.1% vs 7.2%
0.83 vs 0.74QWINT-3、78週。発現割合 41.20% vs 37.50%
Basal-Bolus療法中の2型
5.64 vs 5.62ONWARDS 4、26週。発現割合 51.5% vs 55.7%
5.99 vs 5.33QWINT-4、26週。発現割合 55.62% vs 55.62%
1型(参考)
19.93 vs 10.37ONWARDS 6、26週。発現割合 85.2% vs 76.4%
14.03 vs 11.59QWINT-5、52週。重症低血糖の発現割合 10.2%(35/343例)vs 3.15%(11/349例)
いずれも「本剤 vs 対照薬」。レベル2は血糖値54mg/dL未満、レベル3は回復に他者の介助を要する重症低血糖。年間発現件数と発現割合は別の指標です。
2型の低血糖の結果は、試験や評価期間によって異なります。HbA1cの非劣性は、低血糖リスクが同等であることを意味しません。 たとえばONWARDS 2では、年間発現件数が0.73 vs 0.27、発現割合が14.1% vs 7.2%と数値上は本剤で多く、推定率比は1.93[95%CI 0.93〜4.02]で統計的な有意差はないものの、不確実性の大きい結果でした。試験ごとの発現件数・発現割合・信頼区間を分けて読む必要があります。1型では両剤とも対照薬より多く、オンスイクが1型を「使用しないこと」としている根拠の一つです(電子添文5.1、15.1.1)。
間接比較の結果は、対象患者と評価指標をそろえて読む
直接比較の代わりに、統計的な手法で両剤を比べた研究が2026年に報告されています。いずれも既存の試験データを使った二次的な研究です。
マッチング調整間接比較(MAIC) Basalインスリン治療中の2型で、エフシトラの体重増加と低血糖の件数が少ないと推定
QWINT-3とONWARDS 2、QWINT-4とONWARDS 4を比較。Basalインスリン治療中の2型では、HbA1cの変化は同程度で、エフシトラのほうが体重増加が少なく(差 −1.52kg)、レベル2または3の低血糖の発現件数(イベント率)が少ないと推定されました(率比 0.436[95%CI 0.241〜0.786])。ただし、低血糖を経験した患者の割合には有意差がありませんでした (オッズ比 0.581[0.294〜1.14])。Basal-Bolus療法中では同程度。著者所属に開発元のEli Lillyを含む研究で、利益相反も踏まえて解釈します(Bajaj HS, et al. Diabetes Obes Metab. 2026)。
ネットワークメタ解析 イコデクのHbA1c低下が大きい一方、レベル1低血糖が多いと推定
2型の13試験・7,402例を解析。イコデクはエフシトラよりHbA1cを0.12ポイント大きく低下させた一方(平均差 −0.12[95%CI −0.23〜−0.01])、レベル1低血糖が多い結果でした(リスク比 1.17[1.01〜1.35])。レベル2または3の低血糖に有意差はなく(リスク比 1.14[0.86〜1.50])、この評価項目のエビデンスの確実性は「低」と評価されています。著者は、HbA1cの差は臨床的に意味のある差(0.3〜0.5程度)を下回るとしています(Li J, et al. Front Endocrinol. 2026)。
対象集団・解析方法・評価指標が異なる間接比較であり、両剤の有効性・安全性の優劣を確定するものではありません。 現時点では直接比較試験がなく、製剤は、低血糖リスク、治療歴、腎機能、投与スケジュール、保管環境などを踏まえて選択する必要があります。
薬物動態の違い(電子添文より)
作用が長く続く仕組み
アルブミンと可逆的に結合し、ゆっくり解離して受容体に結合
Fc融合タンパク(分子量 約67,000)。分子が大きく腎クリアランスが低い、FcRnを介して分解を免れ再利用される、受容体への親和性が低い
違い 消失半減期
155時間日本人2型、8週目。日本人1型は164時間
約17日4単位/kg反復投与、定常状態
最高濃度到達時間
15.1時間日本人2型、8週目の中央値
2.5日定常状態
濃度の山と谷
―
定常状態での血中濃度のピーク/トラフ比 1.16血糖降下作用(GIR)の1日あたり割合のピーク/トラフ比 1.07
違い 腎機能障害での曝露量
重度/正常のAUC比 1.16単回投与、外国人
重度/正常のAUC比 1.77母集団解析による反復投与時の推定。中等度以上で慎重に用量調整(9.2.1)
抗体
―
2型の第III相併合で、本剤に対する抗体2.2%、中和抗体0.6%
腎機能障害での数値は、試験の方法(単回投与の実測か、母集団解析の推定か)が違うため直接は比べられません。電子添文上、注意の対象として明記されている腎機能の区分が異なります(アウィクリ:重度の腎機能障害、オンスイク:中等度以上の腎機能障害)。
この節の文献
Rosenstock J, et al. ONWARDS 1. N Engl J Med. 2023;389(4):297-308. Philis-Tsimikas A, et al. ONWARDS 2. Lancet Diabetes Endocrinol. 2023;11(6):414-425. Mathieu C, et al. ONWARDS 4. Lancet. 2023;401(10392):1929-1940. Russell-Jones D, et al. ONWARDS 6. Lancet. 2023;402(10413):1636-1647. Wysham C, et al. QWINT-2. N Engl J Med. 2024;391(23):2201-2211. Philis-Tsimikas A, et al. QWINT-3. Lancet. 2025;405(10497):2279-2289. Blevins T, et al. QWINT-4. Lancet. 2025;405(10497):2290-2301. Bergenstal RM, et al. QWINT-5. Lancet. 2024;404(10458):1132-1142. Bajaj HS, et al. Diabetes Obes Metab. 2026;28(11):10725-10735. Li J, et al. Front Endocrinol. 2026;17:1902260.
7.投薬過誤による低血糖に注意(2剤共通)
週1回インスリンは投与方法そのものが従来のインスリンと異なるため、2剤ともRMPで「投薬過誤」が重要なリスクに挙げられています。
アウィクリ 国内外で投薬過誤による重大な低血糖が報告
2025年10月31日までに、次のような事例が報告されています(2025年12月「適正使用のお願い」)。2026年4月の電子添文改訂で8.4項に注意が追記されました。
週1回の薬剤を誤って連日投与 した 1クリック=10単位を1単位と誤認 した 単回使用の週1回GLP-1受容体作動薬等の使用経験がある方が、目盛を見ずにダイアルを最大単回投与量 に設定した
国内の実例 アウィクリの初回量がそのまま継続処方された
連日投与のBasalインスリン(ランタスXR)からアウィクリへの切り替えで、初回量(1日総投与量の7倍×1.5)にあたる量が週1回でそのまま継続処方され、薬局の疑義照会で2回目以降の量が修正された事例が報告されています(日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業「共有すべき事例」2026年No.6)。
オンスイク 臨床試験の投薬過誤の多くは「初回3倍の繰り返し」など
第III相試験で、本剤群24例、対照薬群3例に投薬過誤が報告されています。本剤群では、初回限りの3倍用量を2回目以降も繰り返すなど、用量調整上の過量投与が21例 、同一週内の複数回投与・連日投与・追加投与が3例でした。24例中11例で、投薬過誤の後に低血糖が認められています(RMP)。
2剤共通 低血糖は長引き、再発することがある
低血糖は回復が遅れるおそれがあり、臨床的に回復しても再発することがあるため、継続的な観察が必要です(11.1.1)。アウィクリの臨床試験では、低血糖は各投与後の2〜4日に最も多く認められています。
薬局ではここをチェック
01
初回量・2回目量・投与日を分けて確認
初回だけ増量する場合があります(アウィクリの切り替え時の1.5倍、オンスイクの3倍や300単位など)。初回増量を行った患者では、その増量が2回目以降の処方に引き継がれていないかを確認します。実際に、アウィクリの初回量がそのまま継続処方され、疑義照会で修正された事例が報告されています。
処方に「週1回」の指示があり、初回量と2回目以降の量が区別されているか
02
単位数の伝え方
1目盛はアウィクリが10単位、オンスイクが5単位です。患者さんが濃度やクリック数から換算せず、指示された単位数をそのまま表示窓に設定できるよう指導します。
「何目盛」ではなく「何単位」で伝え、単位表示窓を毎回確認
03
2剤のルールを混同しない
初回の上乗せ(1.5倍か3倍か)、2回目の基準量(オンスイクの80%換算)、打ち忘れ(気づいたら投与か、4日超ならスキップか)、使用中の保管(室温が基本か冷蔵か)が、2剤で異なります。
04
週1回製剤と連日投与製剤の切り替え
週1回製剤から連日投与製剤に戻すときの開始時期・開始用量の考え方も2剤で異なります(アウィクリ8.10、オンスイク8.11)。オンスイクの電子添文には、他の週1回Basalインスリンとの切り替えに関するデータは得られていない、と明記されています(7.7)。
切り替え時と一定期間の血糖モニタリングを処方医と共有
在宅の現場で気づけること
ケアマネジャー・訪問看護のみなさまへ
週1回のインスリン(アウィクリ、オンスイク)を使っている方では、次のようなことにお気をつけください。
01
打つ曜日がカレンダー等に書かれているか 毎日打つインスリンから切り替えた方は、習慣で毎日打ってしまうおそれがあります。打った日に印をつけると、打ち忘れ・二重打ちに気づきやすくなります。
02
打ち忘れに気づいたとき 2つの薬で対応が違います(アウィクリは気づいた時点で打ち、次回は4日以上あけて新しい曜日で続ける。オンスイクは4日以内ならすぐ打ち、4日を超えていたら飛ばして、もとの曜日に)。患者さん向けの冊子(オンスイク「オンスイク注ミリオペンを使用される患者さんへ」、アウィクリ「アウィクリ注をお使いになる方へ」)に沿って対応してください。低血糖の症状があるとき、すでに打ったか分からないとき、判断に迷うときは、自己判断で打たずに薬局か主治医へ確認してください。
03
誤って多く打ったかもしれないとき 毎日打ってしまった、初回の増量分を2回目以降も打った、指示より多く打った可能性がある場合は、症状がなくてもすぐに主治医・医療機関へ連絡してください。薬の名前、打った日時、単位数、血糖値を伝え、次回の注射は指示を受けるまで行わないでください。
04
ふらつき・冷や汗・ぼんやりしている・いつもと様子が違う 低血糖の可能性があります。意識がはっきりしていて安全に飲み込める場合は、事前に指導されたブドウ糖などをとってもらい、可能なら血糖値と症状を確認してください(α-グルコシダーゼ阻害薬を併用している方は、砂糖ではなくブドウ糖を)。意識がおかしい、けいれんがある、飲み込めない場合は、無理に口から飲食させず、すぐに119番で救急車を呼んでください。 週1回の薬は効き目が長く、いったん回復しても再び下がることがあります。回復した後も主治医へ連絡し、観察のしかたや次回の注射について指示を受けてください。高齢の方は、冷や汗や動悸などの典型的な症状が出にくいことがあります。
05
熱・下痢・吐き気などで食事が十分とれないとき 日数を待たず、早めに主治医へ連絡してください。自己判断で注射をやめたり量を変えたりしないでください。水分もとれない、嘔吐が続く、意識や呼吸の様子がおかしいときは、すぐに受診してください。
06
注射ペンの置き場所 オンスイクは使い始めた後も冷蔵庫で保管する薬です(やむを得ず室温に置いた日数は、使い始める前の期間も含めて合計14日まで)。アウィクリは使い始めた後は室温(光を避ける)で保管できますが、冷蔵庫で保管することもできます。色の違うペンが並んでいる、どちらの薬か分からないといった様子があれば、取り違えの確認のためお知らせください。
参考資料
国内の用法・用量と安全対策(電子添文・RMP・企業資材・公的な医療安全情報)
・オンスイク注ミリオペン総量1500単位 電子化された添付文書(2026年9月作成、第1版)、日本イーライリリー
・オンスイク注ミリオペン総量1500単位 医薬品リスク管理計画書(提出年月日:令和8年9月17日)、日本イーライリリー
・オンスイク注ミリオペン 適正使用のお願い(医療従事者向けRMP資材)、日本イーライリリー(medical.lilly.com/jp/onswik )
・アウィクリ注 フレックスタッチ 電子化された添付文書(2026年4月改訂、第5版)、ノボ ノルディスク ファーマ(PMDA )
・アウィクリ注 フレックスタッチの適正使用のお願い(2025年12月)、ノボ ノルディスク ファーマ(PDF )
・医薬品医療機器総合機構「2026年度 新医薬品の承認品目一覧」(PDF )
・日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業「共有すべき事例」2026年No.6(PDF )
臨床試験(原著論文) : ONWARDS 1・2・4・6、QWINT-2〜5(上の「臨床試験と薬物動態の比較」内の文献一覧を参照)
間接比較(既存の試験データを用いた二次的な研究) :Bajaj HS, Fischer M, Davidson MB, et al. Insulin Efsitora Demonstrates Similar Efficacy and Safety Profiles to Insulin Icodec in Insulin-Experienced Individuals With Type 2 Diabetes Mellitus: Matching-Adjusted Indirect Comparisons of QWINT-3 Versus ONWARDS 2, and QWINT-4 Versus ONWARDS 4. Diabetes Obes Metab. 2026;28(11):10725-10735.Li J, Wen J, Zheng H, et al. Efficacy and safety of insulin icodec compared with insulin efsitora in patients with type 2 diabetes: a systematic review and network meta-analysis. Front Endocrinol (Lausanne). 2026;17:1902260.
※オンスイクは2026年10月27日時点で販売開始前です。発売時に最新の電子添文をご確認ください。
最終確認日:2026年10月27日(各剤の電子添文・RMP・適正使用資材と照合