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コラムColumn

2月号のテーマはお薬を飲んでいる方にぜひ知ってもらいたい「果物との飲み合わせ」について!

「グレープフルーツと相性が悪い薬がある」という話を聞いたことがある方は多いと思いますが、その理由は何なのでしょうか? また、グレープフルーツ以外で注意が必要な果物はあるのでしょうか?

なぜ一部の薬ではグレープフルーツを避ける必要があるのでしょうか?

グレープフルーツには「フラノクマリン類」という成分が含まれているのですが、これが小腸にある薬を分解する酵素(CYP3A4)の働きを止めてしまい、普段なら小腸で分解されるはずのお薬がそのまま体に吸収されてしまいます。そのため血液中の薬の濃度が予想以上に高くなることで、副作用が出やすくなってしまうのです。

「では朝に薬を飲んで、夜にグレープフルーツを食べるなら大丈夫でしょう?」とご質問いただくことがあります。 一見するとタイミングがずれていれば大丈夫そうですよね。しかし、これは実は大丈夫ではありません。

一度グレープフルーツによって邪魔された酵素が元の状態に回復するまでには、3日から4日程度かかることが示されています 。「朝にグレープフルーツを食べて、夜に薬を飲めば大丈夫」というわけにはいかないことがわかりますよね。つまり、これらのお薬を毎日飲んでいる間は、グレープフルーツを避けていただくのが最も安全なのです 。

具体的にはどんな薬がグレープフルーツとの相性が良くないのでしょうか?

血圧のお薬(カルシウム拮抗薬)

アムロジピン(ノルバスク)、ニフェジピン、アゼルニジピン(カルブロック)などを飲んでいる方は要注意です。薬によって影響の差はありますが、グレープフルーツと一緒に摂ると血圧が下がりすぎて、めまいや頭痛、動悸が起こることがあります。

コレステロールのお薬(スタチン系)

アトルバスタチン(リピトール)やシンバスタチン(リポバス)を服用中の方は特に注意が必要です。血液中の薬の濃度が高くなると、筋肉が痛んだり、悪い場合「横紋筋融解症」という重い副作用が起こる可能性があります。原因不明の筋肉痛や、尿が赤茶色になったら、すぐに医師に相談してください。

免疫抑制剤

臓器移植後の方や自己免疫疾患の治療で、シクロスポリンやタクロリムスを飲んでいる方は、グレープフルーツは絶対に避けてください。血中濃度の管理がシビアな薬なので、少しの変動でも重大な影響が出る可能性があります。

睡眠薬・抗不安薬

トリアゾラム(ハルシオン)やエチゾラム(デパス)なども影響を受けやすく、薬の効きが強くなりすぎて、日中の眠気やふらつきが強く出ることがあります。

実は、グレープフルーツの仲間である柑橘類の中には、同じように注意が必要なものがあります。

避けた方がよい柑橘類

甘夏、ハッサク、ブンタン(ザボン)、晩白柚(ばんぺいゆ)、スウィーティー、ダイダイ(ポン酢の原料)、メロゴールド、ライムなども、グレープフルーツと同様にフラノクマリン類を含んでいます。

ジャムやマーマレード、ピール(皮の砂糖漬け)にも成分が残っているので、注意が必要です。特に柑橘類の皮には成分が多く含まれています。

安心して食べられる柑橘類

温州みかん、デコポン、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジは、フラノクマリン類をほとんど含まないので、お薬を飲んでいても大丈夫です。レモンやカボス、ユズも、調味料として使う程度の量なら問題ありません。

「それならリンゴジュースやオレンジジュースなら良いのだろうか?」と思った方もいるのではないでしょうか? 実はこれらにも別の落とし穴があります。

花粉症などでよく使われるアレルギーのお薬(フェキソフェナジンなど)は、リンゴジュースやオレンジジュースと一緒に飲むと、小腸から薬を吸収する働きが邪魔されてしまい、血中濃度が最大70%も低下して薬の効き目が悪くなってしまうことが分かっています 。

グレープフルーツの時とは違い、こちらは前後4時間程度時間を空ければ回避できる可能性が高いですが、確実に薬を効かせるためにはやはりお薬は水で飲むのがベストです 。

血液をサラサラにするお薬「ワルファリン」を飲んでいる方は、クランベリージュースやザクロジュースにも注意が必要です。これらの果物がワルファリンの効果を強めて、出血しやすくなる可能性があります。

健康のために果物ジュースを飲むのは良いことですが、ワルファリンを服用中の方は、主治医や薬剤師に相談してから飲むようにしましょう。

お薬を飲んでいる方へのアドバイスをまとめます。

食べ物や飲み物がお薬に与える影響は意外と大きく、良かれと思って飲んでいたジュースが治療の妨げになってしまうこともあります 。お薬を飲むときの基本は、「水(または白湯)」で飲むこと。これが一番安全で確実です。

グレープフルーツや注意が必要な柑橘類は、お薬を飲んでいる期間中は食べないようにしましょう。「時間をずらせば大丈夫」ではありません。ビタミン補給には、温州みかん、リンゴ、バナナ、キウイなど、安全な果物を選びましょう。

サプリメントにも注意が必要です。グレープフルーツエキスや、濃縮された果実成分を含むものは、通常の果物以上に影響が大きい場合があります。サプリメントを始める前に、必ず薬剤師に相談してください。

果物は健康に良い食品ですが、お薬を飲んでいる方は少し気をつける必要があります。「この果物は大丈夫かな?」と迷ったら、遠慮なく薬剤師にお尋ねください。あなたの飲んでいるお薬に合わせて、食べても良い果物、避けた方が良い果物を具体的にお伝えします。

お薬の効果を最大限に活かし、安全に治療を続けるために、私たち薬剤師がサポートします。どんな小さなことでも、気になることがあれば、いつでもご相談くださいね。