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メトロ・メディカル・インフォメーション、ちぢめてMMI。月イチ更新で患者さんや医療機関、施設のスタッフにちょっと役立つ薬の情報をお届けします。

1月号のテーマは気をつけたい冬の血圧とヒートショックについて!

1月、寒さが本格的になると「最近、家で測った血圧が高めで心配です」というご相談が増えてきます。実は、冬場は夏場に比べて上の血圧が平均5〜10mmHgほど上昇することが知られています1)

なぜ寒くなると血圧は上がってしまうのでしょうか? その仕組みを知ることで、冬を安全に過ごすヒントが見えてきます。

私たちの体は、気温の変化に合わせて血圧を調整する機能を持っていますが、冬は次の2つの理由で血圧が上がりやすくなります。

① 血管が縮む(体温を保つための反応)

寒いと感じると、体は熱を逃がさないように、皮膚の表面にある血管をギュッと細く縮めます。これは、ホースの先を指でつまむと水の勢いが強くなるのと同じ原理です。血管が狭くなると、血液の通り道が減り、血管の壁にかかる圧力(血圧)が高くなります。

② 交感神経が活発になる

寒さそのものが刺激となって、体を活動モードにする「交感神経」が優位になります。すると、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、心臓の鼓動が速くなり、さらに血圧が上がります。

高齢の方は特にご注意を
年齢を重ねると血管の柔軟性が低下するため、急激な血管の収縮に体が対応しきれず、血圧の変動幅が大きくなりがちです。これが、冬に心臓や脳の病気のリスクが高まる大きな理由です。

冬の入浴中に多く発生するヒートショック。これは、短時間のうちに血圧が「急上昇」と「急降下」を繰り返すことで起こります。

① 脱衣所(血圧が急上昇)
寒い脱衣所で服を脱ぐと、血管が縮んで血圧が跳ね上がります。

② 湯船(血圧が急降下)
暖かいお湯に浸かると、今度は全身の血管が広がり、血圧が一気に下がります。

③ 立ち上がる時(さらに血圧低下)
湯船から急に立ち上がると、重力の影響も加わって脳への血流が一時的に減り、意識を失うことがあります。

この激しい血圧の変動が、心臓や脳の血管に大きな負担をかけるのです。

厚生労働省の人口動態統計によると、令和2年の高齢者(65歳以上)の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,900人で、交通事故死亡者数2,508人のおよそ2倍となっています2)

また、消費者庁が統計などを分析した調査では、入浴中に何らかのアクシデントが起きて命を落とす人の数は年間約19,000人と推計されており、特に冬場に多く発生しています2)

ヒートショックは、ちょっとした工夫で予防できます。

以下のポイントを実践してみてください2)

① 脱衣所と浴室を暖める

脱衣所
小型の暖房器具やヒーターを使って、室温を20度前後に保ちましょう。

浴室
入浴前に浴槽のふたを開けておく、または浴室の壁や床にシャワーでお湯をかけておくと、浴室全体が暖まります。

② お湯の温度は「ぬるめ」に

お湯の温度は41度以下を目安にしましょう。熱いお湯は血圧の急激な変動を引き起こしやすくなります。

③ 入浴時間は短めに

長湯は体に負担をかけます。10〜15分程度を目安に、のぼせる前に出るようにしましょう。

④ 「かけ湯」で体を慣らす

いきなり湯船に入らず、心臓から遠い足先から順番にお湯をかけて、体を徐々に暖めてから入浴しましょう。

⑤ 立ち上がる時はゆっくりと

湯船から出る時は、急に立ち上がらず、浴槽のふちに座るなど、段階を踏んでゆっくり立ち上がりましょう。

⑥ 入浴前後の水分補給

入浴前後にコップ1杯の水を飲む習慣をつけましょう。脱水予防になります。

⑦ 避けたい入浴のタイミング

  • 食後すぐ(消化のために血液が胃腸に集まっている状態)
  • 飲酒後(血管が広がり、さらに血圧が下がりやすい)

⑧ 家族への声掛け

入浴前に「お風呂に入ります」と家族に伝え、いつもより長い場合は様子を見てもらうようにしましょう。

血圧のお薬を飲んでいる方に、特に気をつけていただきたいのが「寒い時期だからと自己判断で量を増やす」「飲み忘れたからと2回分をまとめて飲む」ことです。

なぜ2回分を一度に飲んではいけないの?

お薬は、血液中の濃度が一定に保たれることで効果を発揮します。2回分を一度に飲むと、血液中の薬の濃度が急激に上がりすぎて、血圧が下がりすぎる(低血圧)ことがあります。

起こりうる症状
ふらつき、めまい、意識を失う、転倒して骨折する など

特に高齢の方は、脱水なども重なりやすく、低血圧による危険性が非常に高くなります。

飲み忘れた時の対処法3)

薬の用法いつの薬の飲み忘れ?対応の目安
1日1回①朝食後①寝るまでに気づいたら服薬
1日2回①朝食後
②夕食後
①昼から夕方までに服薬。夕食後の分は就寝前に
②寝るまでに気づいたら服薬
1日3回①朝食後
②昼食後
③夕食後
①昼までに気づいたら服薬。昼分は夕食後、夕分は就寝前に
②夕食までに気づいたら服薬。夕食後の分を就寝前に
③寝るまでに気づいたら服薬

※この表はあくまで原則として、必要に応じてかかりつけ医や薬剤師に相談するようにしてください。

一番の対策は「飲み忘れない仕組み」を作ること
お薬カレンダー、スマホのアラーム、ご家族への声掛けなど、ご自身に合った方法を取り入れましょう。

① 食事:塩分を控えめに

塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体は血液中の塩分濃度を薄めようとして、水分を血液に取り込みます。その結果、血液の量が増えて、血管の壁にかかる圧力が上がります。

冬は鍋料理など塩分の多い食事が増えがちです。出汁やレモン果汁を上手に使って、美味しく減塩を心がけましょう。

② 水分補給:冬の脱水に要注意

冬は喉の渇きを感じにくいため、知らず知らずのうちに軽い脱水状態になることがあります。血液がドロドロになると流れが悪くなり、血圧が不安定になったり、血栓(血の塊)ができやすくなります。

こまめな水分補給を意識しましょう。

③ 温度差をなくす工夫

トイレ・脱衣所
→ 小さな暖房器具を置く。

起床時
→ 枕元に上着を置いておき、羽織ってから布団を出る。

血圧の値は、その日の体調や心の状態も反映します。「いつもより少し高いかな?」と感じた時は、焦らずにまずは深呼吸をして、安静にした状態で測り直してみてください。

もし高い数値が続くようであれば、記録した血圧手帳を持ってご来局ください。医師への橋渡しや、お薬の調整が必要かどうかのご相談を、薬剤師が承ります。

寒い冬も、正しい知識と対策で安心してお過ごしください。

(1)Narita K, et al. Seasonal variation in home blood pressure in patients treated for hypertension: the HOMED-BP study. Hypertension Research. 2010;33(3):234-239.

(2)消費者庁編. 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! -自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-.2020.

(3)日本高血圧学会編. 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話. 2019