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引き出しの奥から使いかけの目薬が出てきました。使用期限を見ると、まだ1年以上先。「お、まだ使えそう」と思ったことはありませんか?

実は、その日付は目薬を開ける前の使用期限です。もう開けてしまった使いかけの目薬には当てはめることはできません。では開けてしまったら期限はどうなるのかというと、一般的な医療用の点眼薬では箱の日付に関係なく開封後1か月以内に使い切ることが目安とされています。

この記事では、開封後の使用期限が短くなる理由や、なぜ「1か月」なのかを、研究データと製薬会社の資料をもとに解説していくので気になる人はぜひチェックしてみてください。

目薬の箱や容器には、「2027.12」のように使用期限が書かれています。これは、未開封のまま、決められた方法で保管した場合に品質が保たれる期限です。

目薬は製造時に、細菌や真菌などの微生物が存在しない「無菌」の状態になるように作られています。容器も、その無菌性を保てるように設計されています。ところが、いったんキャップを開けて使い始めると状況が変わります。目薬の先端がまつ毛やまぶたに触れたり、使用中に汚れが付着したりすることで、微生物に汚染される可能性が生まれるからです。

そのため、未開封の使用期限と、開封後に使用できる期間は別々に考える必要があります。

実際に使われていた目薬を調べた研究

中国の大学病院で、緑内障の患者さんが実際に使っていた目薬244本を調べた研究があります1)。目薬の容器の先端を綿棒で拭き取り細菌や真菌などの微生物が付着していないかを調べたところ、244本中16本(6.6%)の容器の先端から微生物が検出されました。特に、開封後4週間以内の目薬では微生物が検出された割合が3.3%だったのに対し、4週間を超えたものでは11.8%でした。

他にも、1日にさす回数が多いことや、さす時に容器の先端がまぶたや周囲のものに触れていたことが、菌が見つかりやすい原因だったようです。

ただし、この研究で調べたのは容器の先端への微生物の付着です。目薬の液体そのものが汚染されていたことを示すものではなく、開封後の日数が長くなるほど必ず汚染が進むと証明されたわけでもないということには留意しておく必要があります。

それでも、目薬を長く使い続けることや容器の先端をまぶたに触れさせることが、衛生面でのリスクにつながる可能性を示した研究と言えるでしょう。

では、なぜ「1か月」なの?

実は、開封後1か月までは安全で、1か月を超えると急に危険になるという科学的なラインがあるわけではありません。目薬を製造する製薬会社では、実際に患者さんが使用する期間を想定して、開封後も品質が保たれるかを調べる試験を行っています。

例えば参天製薬では、多くの患者さんが用法・用量どおりに使用して使い切る期間として1か月を想定し、開封後の安定性試験を行っています²⁾。その試験では、薬の成分が減っていないか、微生物に汚染されていないかなどを確認しています。さらに、微生物を意図的に加えて、製剤が微生物の増殖を抑えられるかを確認する試験(保存効力試験)も実施されています。

つまり、開封後1か月という目安は、衛生面のリスクに加え、製剤の品質を確認するための試験や実際の使用状況も踏まえたものなのです。

すべての目薬が開封後1か月とは限らない

ここまで「開封後1か月」と説明してきましたが、これは主に一般的な医療用点眼薬の目安です。目薬の種類によっては、開封後に使用できる期間が異なります。

✔1回使い切りタイプの目薬

小さな容器に1回分が入っているタイプの目薬は、基本的に開封したらその場で使用して余った液は捨てます。こうした製品には防腐剤が配合されていないものもあり、開封後の保管や再使用を想定していません。「まだ残っているから次に使おう」と考えず、製品の使用方法に従いましょう。

✔粉と液を混ぜて使う目薬

使用前に粉と液を混ぜたり、粉を溶かしたりするタイプの目薬には、調製後の使用期限が個別に設定されているものがあります。このような目薬は、一般的な1か月という目安ではなく、製品に指定された期間を守る必要があります。

✔ドラッグストアで購入した市販の目薬

市販の目薬と医療用の目薬では、開封後の使用期間の目安が異なります。市販の一般用点眼薬は開封後3か月以内を目安としているメーカーもあります。ただし、市販の目薬でも製品によっては別の使用期限が設けられているので、いずれの場合も箱や説明書に開封後の使用期限が書かれていれば、その指示を優先しましょう。

「長持ちさせるために冷蔵庫に入れておけばいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、冷蔵の指示がない目薬は、基本的に冷蔵庫に入れる必要はありません。

目薬には、室温で保管できるものと、冷所での保管が必要なものがあります。室温で保管できる目薬は、直射日光や高温を避け、なるべく涼しい場所に保管しましょう。特に、夏の車内や窓際など、高温になる場所に放置するのは避けてください。

一方、「冷所保存」や「冷蔵庫保存」と指定されている目薬は、その指示に従って保管します。冷蔵庫に入れる場合は、凍らせないように注意しましょう。また、光によって品質が変わりやすい目薬では、付属の遮光袋に入れるよう指定されていることもあります。

なお、冷蔵庫に入れたからといって、開封後の使用期限が延びるわけではありません。製品ごとに決められた保管方法と使用期限を守ることが大切です。

目薬を安全に使うには、日頃のちょっとした工夫が役立ちます。

1. 点眼前に手を洗う

目薬をさす前には、石けんと流水で手を洗いましょう。手についた汚れや微生物が、目や容器に付着するのを防ぐためです。

2. 容器の先端を目やまつ毛に触れさせない

点眼するときは、容器の先端が目、まつ毛、まぶたに触れないようにしましょう。

容器の先端が触れると、微生物が付着したり、目の表面を傷つけたりする可能性があります。

3. あふれた液は軽く拭き取る

目からあふれた液は、清潔なティッシュなどで軽く拭き取りましょう。目の周囲に流れた液を、容器の先端で触ったり、目の中に戻したりしないようにします。

4. 使用後はキャップをしっかり閉める

点眼後はキャップをきちんと閉めて、指定された場所に保管しましょう。キャップの内側にも、できるだけ触れないようにしてください。

5. 開封日を箱や点眼袋に書いておく

いつ開けたのかわからなくなるのを防ぐため、開封日を記録しておきましょう。例えば、10月1日に開けたら、箱や点眼袋に「10/1 開封」と書いておくと便利です。なお、油性ペンを点眼容器に直接使用すると、インクの成分が容器を通して薬液に影響する可能性があるため、箱や点眼袋、ラベルなどに記録するのがおすすめです。

6. 家族や友人と貸し借りしない

目薬は、家族や友人と共有しないようにしましょう。容器の先端を介した汚染の可能性があるだけでなく、症状が似ていても必要な薬が同じとは限りません。

「まだ半分くらい残っているのに、捨てるのはもったいないなあ」と感じる方も多いと思います。しかし、一般的な医療用点眼薬は、特に指示がなければ開封後1か月を過ぎたら残っていても処分しましょう。開封後の品質がいつまで保たれるかは、見た目だけでは判断できません。

また、開封後1か月以内であっても、次のような異常があれば使用を中止し、薬剤師などに確認してください。

  • ・以前と比べて液の色が変わった
  • ・本来は透明な液なのに濁っている
  • ・見慣れない浮遊物がある
  • ・保管方法を間違え、高温などに長時間さらしてしまった

なお、もともと白く濁っているタイプの懸濁性点眼液もあるので、濁っていたら必ず問題というわけではありません。また、処方された目薬が毎回たくさん余る場合は、処方量と実際の使用量が合っていない可能性もあります。自己判断で点眼回数を増減することはせずに医師や薬剤師に相談しましょう。

  • ・一般的な医療用点眼薬は、開封後1か月以内が目安
  • ・市販の目薬では、開封後3か月以内が目安となるものもある
  • ・製品ごとに開封後の使用期限が決められている場合は、その指示を優先する
  • ・容器の先端を目やまつ毛に触れさせず、指定された方法で保管する
  • ・開封日を箱や点眼袋に書いておくと、使用期限を確認しやすい
  1. (1)Wang YM, Ren YL, Xu J, Zhang XF. Research and correlation analysis on the dripper contamination of carteolol hydrochloride eye drops. Ann Palliat Med. 2021;10(6):6779-6785. DOI(PubMed PMID: 34154346)
  2. (2)参天製薬 Santen Medical Channel「服薬指導(点眼剤)」 https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/faq/DK018_faq.html
  3. (3)千寿製薬「よくあるご質問」 https://www.senju.co.jp/faq
  4. (4)岡山大学病院 薬剤部 患者向け資料(目薬の使い方・保管) https://pharm.hospital.okayama-u.ac.jp/kanja/pdf/mado367.pdf