このたび当薬局では、抗血小板薬「エフィエント錠(プラスグレル塩酸塩)」のオーソライズド・ジェネリック(AG)であるプラスグレル錠2.5mg/3.75mg/5mg/OD錠20mg「DSEP」についての勉強会を開催しました。製薬会社のMRの方をお招きし、薬局スタッフ一同で最新情報を学びましたので、その内容をご紹介します。
虚血性心疾患とは?
心臓は全身に血液を送り続けるために、自らも冠動脈という血管から酸素と栄養を受け取っています。この冠動脈が動脈硬化や血栓によって狭くなったり詰まったりして、心臓への血流が不足する病気をまとめて「虚血性心疾患」と呼びます。
胸の痛みや圧迫感が主な症状で、大きく以下の2種類に分類されます。
- ・急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症):突然の強い症状が現れるもの
- ・慢性冠動脈疾患(労作性狭心症・攣縮性狭心症):一定の状況下で繰り返し症状が出るもの
高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などが主な原因となるため、これらの生活習慣病をコントロールすることが、心筋梗塞などを起こさないための「一次予防」として非常に重要です。
治療の方法
虚血性心疾患の主な治療法は次の3つです。
- ・PCI(経皮的冠動脈形成術):カテーテルを使って狭くなった血管にステントを留置し、血流を回復させる方法。現在最もよく行われています。
- ・血栓溶解療法:薬で血栓を溶かす方法。
- ・冠動脈バイパス術(CABG):詰まった血管を迂回する新たな血液の通路を作る外科的手術。
これらの治療を受けた後には、再び血栓ができるのを防ぐために抗血小板薬が処方されることが多く、ステントを留置している患者さんには特に重要なお薬です。
抗血小板薬「プラスグレル(エフィエント)」とは?
プラスグレルはP2Y12受容体阻害薬という種類の抗血小板薬で、血小板が固まって血栓を作るのを防ぐ働きをします。
従来から使われているクロピドグレル(プラビックス)と同じ仲間のお薬ですが、プラスグレルには次のような特長があります。
① 効果の立ち上がりが早い
心筋梗塞で緊急搬送された際など、すぐに効果が必要な場面でも迅速に作用を発揮します。
② 遺伝子多型の影響を受けにくい
クロピドグレルは、患者さんの遺伝子の型(CYP2C19遺伝子多型)によって効きにくいケースがあります。プラスグレルはこの遺伝子多型の影響を受けにくく、より均一な効果が期待できます。救急の現場では検査をする時間がないため、この点は大きなメリットです。
オーソライズド・ジェネリック(AG)とは?
オーソライズド・ジェネリック(AG)とは、先発医薬品メーカーから正式に許可を受けて製造・販売されるジェネリック医薬品のことです。
今回発売されたプラスグレル錠AGは、先発品(エフィエント錠)と原薬・添加物・製造工場・製造ラインがすべて同一とのこと。薬価は先発品の約半額程度となり、患者さんの薬代の負担軽減が期待できます。
規格・用量について
プラスグレル錠AGには以下の4つの規格があります。
| 規格 | 主な用途 | 備考 |
|---|---|---|
| 2.5mg錠 | 体重50kg以下の方への減量用 | 現在は心臓(PCI)適応のみ※ |
| 3.75mg錠 | 標準的な維持用量(最も多く使われます) | 現在は心臓(PCI)適応のみ※ |
| 5mg錠 | 以前は4錠(20mg相当)で初回投与に使用 | 心臓(PCI)適応のみ。20mg錠の登場以降は使用頻度が低下 |
| 20mgOD錠 | PCI施行前の初回投与(ローディングドーズ)用 | 心臓(PCI)適応のみ |
※脳血管領域(脳梗塞後の再発抑制)への適応拡大は今後予定されています(次項参照)。
外来で処方される多くの患者さんには、2.5mgまたは3.75mgが使用されます。20mg錠はカテーテル治療を行う施設での急性期使用が中心です。救急などの急性期使用が主で、水なしですぐ飲めるように20mgのみOD錠(口腔内崩壊錠)となっています。
今後の適応拡大について
先発品エフィエントの2.5mg錠・3.75mg錠は、2021年12月に虚血性脳血管障害(脳梗塞)後の再発抑制の適応を取得していますが、今回発売されたプラスグレル錠は、発売当初の適応は虚血性心疾患(心臓領域)のみとなっています。
ジェネリック医薬品は再評価申請を経て適応症が追加されるというルールに基づき、今後3か月程度を目途に脳血管領域(脳梗塞後の再発抑制)への適応拡大が見込まれています(記事執筆時点の情報)。
脳梗塞後の再発予防でお薬を服用されている患者さんにとっても、今後は選択肢の一つになる見込みです。
使用時の注意点
抗血小板薬は血が固まりにくくなるお薬のため、出血しやすくなるという副作用があります。次のような点にご注意ください。
- ・歯科治療や手術を受ける際は、必ず担当医・歯科医・薬剤師にこのお薬を飲んでいることをお伝えください。
- ・転倒や打撲に気をつけてください。
- ・出血が止まりにくい・青あざができやすいなどの症状があればご相談ください。
自己判断でお薬をやめないことがとても大切です。ステントを留置している患者さんが抗血小板薬を勝手に中断すると、血栓が形成されて非常に危険な状態になる可能性があります。何かご不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。
再発予防のための生活習慣
お薬の治療と並行して、以下のような生活習慣の改善も再発予防に大きく貢献することがわかっています。
運動療法: 18〜64歳の方は1週間に23メッツ相当の身体活動(ウォーキングや軽いスポーツなど)が推奨されています。心臓に負担をかけすぎない適度な運動が、心血管イベントの再発リスクを下げるというエビデンスがあります。
食事療法: 肉よりも魚を中心とした食事、塩分・脂質の制限、野菜・食物繊維の積極的な摂取が推奨されています。また、揚げ物よりも蒸す・焼くなどの調理法の工夫も、コレステロール管理に有効です。
多剤服用(ポリファーマシー)について
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの管理薬に加えて抗血小板薬も服用するとなると、お薬の数が多くなりがちです。お薬の種類が増えると、飲み忘れや飲み間違いのリスクも高まります。
当薬局では、患者さんが安全・安心にお薬を服用いただけるよう、一包化など飲みやすい調剤方法のご提案や残薬の調整、処方内容の見直し(ポリファーマシー対策)のご相談なども承っています。お薬についてわからないことやご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。
当薬局では、今後も患者さんやご家族に役立つ情報を発信してまいります。お薬に関するご質問はいつでも薬剤師にお声がけください。

